3月7日(土)、8日(日)、CWSC主催・株式会社トーケミ協賛にて小規模な水供給に関するセミナーを、能登半島を会場に開催しました。小規模水道セミナーは、大分市、津山市での開催以来、約14年ぶり。能登半島地震および奥能登豪雨により長期断水に見舞われた奥能登地域での初めてのセミナー開催となりました。遠方からの参加者は、金沢からの貸切バスまたは羽田から空路で能登空港に到着し、地域内の参加者は自家用車で7日の会場に集いました。地域内外からの参加者が37名、スタッフ・ボランティア含めて40名を超える規模で2日間のフィールドでの充実したセミナーを実施することができました。
1日目の7日は、能登空港ターミナルビル会議室をお借りし、ポスター展示および講義。開会後、石川県奥能登総合事務所の森岡範光・企画振興課課長より、空港ビルが雨水貯留・利用システムを備えていたことで地震直後に水洗トイレが使える臨時避難所、物資および支援活動拠点として5カ月にわたり機能したこと等を紹介いただきました。
第1部は、「いまなぜ小規模水供給システムが必要なのか」をテーマに、保屋野理事長が、以前からある小規模水道が能登半島地震後に注目され、国も小規模分散型システム導入の検討に至った背景と現状を紹介。全国的な人口減少も踏まえ、平時から地域独自の水供給の仕組みを備えておく重要性について話しました。
続いて、珠洲市の事例として高屋地区と真浦地区の粗ろ過・緩速ろ過の浄水の仕組みによる小規模浄水施設設置の経緯、素材、工法、水質、使われ方までの詳細を、それぞれ設置に携わったCWSCの松尾俊作理事、金沢市在住の林国俊会員が報告。タイプは異なるものの、それぞれに採用した粗ろ過・緩速ろ過の浄水の仕組みも解説しました。

第2部は、北海道立総合研究機構の研究主幹・牛島健さんが、「地域の水は自分たちで守る~北海道で地元高校生らが実践した小規模水道支援の実例」を講演。北海道では、地域の住民組織が管理運営を行う「地域自律管理型水道」がカバーする面積比率が道面積の3分の1を占める重要な水インフラで、低コストかつ住民の強い責任感という強みと課題を含めて、地域の持続可能な水インフラとしての可能性が指摘されました。
そうした地域水道を多様なセクターが支援する体制を構築したのが「富良野モデル」。そのなかで北海道立富良野高等学校科学部の部活動、北海道立富川高等学校での総合的な探究活動として、管路情報のデータベース(GIS)化や水質分析がなされ、それらのデータベース化などの成果が地域水道管理者に提供されたこと、地域外・海外へも成果が発信され各種の授賞や国際交流などへと発展したことが詳しく紹介されました。地域水道が持つ、若者の地域教育や地域社会の誇りの再生といった可能性について、非常に示唆的な内容を講義いただきました。
第3部では、「自分たちでもできる小規模水供給システムの仕組み・作り方・運用」として、「上向流粗ろ過・緩速ろ過の仕組みと作り方」の詳細なノウハウを松尾理事が解説。元NPO法人大分の水と生活を考える会会員の加崎史啓さんは、県の限界集落対策として展開した粗ろ過・緩速ろ過システム・ユニットの開発・設置の展開過程を報告してくださいました。
以上の報告・講演後の質疑応答では、粗ろ過・緩速ろ過が効果を発揮する条件や、地域内の参加者の方々からはより具体的で切実な質問が出されました。
1日目のプログラム終了後、遠方からの参加者はバスにて宿泊先のラブロ恋路(能登町)に移動し、心のこもった美味しい食事と大浴場でくつろぎ、互いに交流を深めました。
2日目の8日は、珠洲市の事例地3カ所を巡りました。まず内陸にある東山中地区の小規模飲料水供給施設に立ち寄り、地震後、珠洲市で最も早く復旧した地下水源の貯留タンクを確認。高屋地区に移動してからは、渓流に沿って設置されたポリ容器を連ねた浄水施設を松尾理事の解説を受けながら見学しました。

そこから外浦に面した馬緤(まつなぎ)地区に移動。この地区は、地震直後に孤立状態となるも即座に数か所の自主避難所を住民自らが設置し、そのなかで中核的役割を果たした珠洲自然休養村センターで、水確保のための「水プロジェクト」を立ち上げた経緯をリーダーの方々から話していただきました。プロジェクトは、山腹の地すべり対策水抜き井戸からパイプで引水して施設内に引き込み、トイレ、風呂、手洗いの生活用水として利用、現在も活用していることなどをお聞きしました。見学者一同のお弁当昼食時にアオサ味噌汁も用意してくださり、温かなおもてなしを受けました。


この後、すず塩田村道の駅で施設見学をし、最後の訪問地の真浦地区に向かいました。10分足らずの行程は、隆起した海岸上に仮設された道路を、今にも崩落しそうな巨大な岩の崖下を走るもので、今回の地震による地形変動を実感。この前日には、波浪警報が発令されて通行禁止だった区間です。
真浦地区の民泊施設・現代集落では、2025年4月、NPO法人大分の水と生活を考える会から寄贈された粗ろ過・緩速ろ過施設と水源井戸を、金沢の林会員の説明を受けながら見学しました。地元参加者とはここで分かれ、遠方からの参加者はバスで能登空港経由で金沢に戻り、全員無事に帰途に就きました。
2日間、ときおり小雪が舞う寒風のお天気でしたが、2日目の朝に雪景色に驚かされたものの移動や行動に支障はなく全行程を滞りなく終えることができたことに、スタッフ一同心から安堵した次第です。参加者の方々に水と人・地域との“原点”を見て感じていただけたなら幸いです。実施にあたりご協力くださったすべての方々に感謝申し上げます。
(2026年3月14日記載)